大学間連携による大学院教育

東京コンソーシアム(大学間連携)による大学院教育

 東京コンソーシアムでは、各大学の特色ある生命科学領域の関連分野や異分野を授業科目に開設し、幅広い視野を持った人材の育成を行います。そのために、4大学間の共通カリキュラム開発、学位指導や学位審査の標準化、FD•SDの共同実施などを行い、大学院教育の高度化と質の保証をめざしています。また、連携企業や研究機関、自治体と学際生命科学東京コンソーシアムを組織し、4大学の大学院生は進路や研究課題の必要性また適性等に応じ、組織内の最適な施設で最適の指導教員から研究指導を受けることが可能となるようにしていきます。複数指導員制やインターンシップの導入により、一つの大学に留まらずに課題研究を探求し、企業等でインターンシップを行うことができるようにもしていきます。

 お茶の水女子大学では、物質にもとづく生命科学の基礎教育に特徴があり、コンソーシアムでは、この分野の教育研究を担っています。

 

疾患予防科学とステークホルダーについて

 博士後期課程の学生(1年生)に配布されている疾患予防科学領域(DPSC)のシラバスに記載されいている設置の背景や社会の要請について紹介します。硬い文章ではありますが読んで頂ければと思います。他大学の学生さんで本領域にご興味がありシラバスを希望される方は、4月3日の記事「東京コンソーシアム共通シラバス2014および疾患予防科学領域(DPSC)シラバス2014」よりダウンロードして頂くか、本ホームページ問い合わせ先より担当教員にご連絡頂ければ冊子をお送りする事も出来ます。

 シラバスの文面(1.背景、2.社会の要請)には、多少馴染のない単語もありますのでシラバス文面を読み取るための解説を少し述べます。現在日本が直面している高齢化社会では、生活習慣病などによる治療費が膨大になっています。しかも平均寿命は女性が86歳位で男性が80歳位と長い一方で、健康寿命という介護や第3者の助けなしに生活できる寿命は女性で78歳、男性で72歳程度と平均寿命に比べ8年ほど短くなっています。医療費の問題を解決するとともにクオリティオブライフを高めるためには疾患予防という考え方がとても重要になります。東京コンソーシアムは生命科学系の学部・専攻によって構成されていますので、疾患予防に貢献するための科学を推進し、次の時代を担う人材を育成する事を目指します。

 疾患予防科学へのアプローチは様々であります。食物科学という観点によるアプローチ、パーソナルゲノム解析、エレクトロニクスデバイスやコーチなどの心理学に基づく指導など、様々な視点で疾患予防科学が創成されても不思議はありません。実際にこれらのテーマは疾患予防科学概論でも取り上げられています。

 ステークホルダーという言葉は、ビジネスの世界で良く使われている言葉で、「直接・間接的に利害を共にする当事者」という意味でつかわれています。よって、この疾患予防科学領域についてのステークホルダーは、皆さんが修了後に活躍する社会全般(企業・公的機関・NPO・地域社会など)が対象となります。本領域の教育にご協力頂いている企業の数々はコチラのパンフレットからもご覧になれます(DPSC_紹介パンフ_お茶大_2014)修了生が即戦力として社会で活躍できるよう多くの企業や団体から意見を頂き専門領域である研究以外に必要とされる力を養うための科目を設置しました。これらの科目群がこのニュース欄でも順次紹介しているものです。

1. 背景

 超高齢化とそれに伴う医療費増大など、日本をはじめとする世界が抱える社会的な課題に対して生命科学が担う役割は大きい。その解決策のひとつとして期待されているのが疾患予防の科学であり、最近の個の遺伝子情報(全ゲノム解析)の解明と、医療機器・各種デバイスから指数的に生み出される情報は、従来の個々の遺伝子解析から疾患を理解する生命科学の立場に加えて、環境を含めたシステム全体の情報を解析することにより従来では見出せなかった疾患予防分野における解決策を生み出すなど、生命科学におけるパラダイムシフトが起こりつつある。
 このように疾患予防科学は新分野であり既存の大学院ではコース・領域の設計が難しいことから、東京に拠点を置く4大学(東京医科歯科大学、お茶の水女子大学、学習院大学、北里大学)が大学院の枠を超え生命科学分野におけるそれぞれの強みを連携させることで、これまでにないコンセプトの新コース・領域を設立することとした。

2. 社会の要請

 本コース・領域を設計するにあたり、大学院博士課程の教育に対する社会の要請を反映させるために、ステークホルダー(企業、学協会、自治体)および関連分野の企業人へのアンケート・ヒアリングを実施した。
 具体的には、以下のような要望が寄せられている。

  1.  疾患予防の課題を鳥瞰できる視点を有する人材。修学中に社会に於ける課題を発見し解決する機会があるプログラム(製薬企業、大手研究所、シンクタンク)
  2.  統計解析の基本的な理解と活用方法の把握。センサー等の機器から生まれる情報が今後膨大な量になり、その解析が求められていることから、データ解析能力を有する人材育成(医療機器メーカー、製薬企業、大手研究所、シンクタンク)。
  3.  国際感覚、語学、コミュニケーション力、マネジメント力、社会貢献を念頭に置いた研究活動の展開など、広い視野を有して社会で活躍する人材育成(医療機器メーカー、製薬企業、大手研究所、シンクタンク)。
  4.  外部機関との共同研究やオープンイノベーションを展開するための下地となる人的ネットワークの形成(大手研究所、シンクタンク)

以上のような要望をベースとして、(1)鳥瞰的な視点を有する人材育成のために「疾患予防の全体学」を中核に置き、(2)その課題を発見し解決するための手法として「データサイエンス学」を実施する。また(3)社会への適応力を修学中に習得させるために「マネジメント論」、「国際動向論」、「知的財産論」を学べるプログラム、および(4)積極的な人的ネットワーク形成サポートを実施することで、社会において将来のリーダーとして活躍できる人材を育成する。
 コース・領域を設計するにあたり、プログラム実施後も積極的にステークホルダーや関連分野の企業人の意見を積極的に取り入れ、コースに参画していただくことで、社会からのニーズを反映した教育体制を構築する。

3. 人材育成目標

生命科学と情報科学の融合により、疾患予防科学などの生命科学においてパラダイムシフトが起こりつつある。本疾患予防科学コース・領域では、東京に拠点を置く4大学(東京医科歯科大学、お茶の水女子大学、学習院大学、北里大学)が大学院の枠を超えて生命科学分野におけるそれぞれの強みを連携させることで、新しい学問分野である疾患予防科学を創出する。

この疾患予防科学コース・領域で育成する人材は、高い倫理観のもと個人情報を適切に管理・解析できるデータサイエンティストの基本能力を有し、疾患予防科学分野における各種の課題を発見し解決することで社会にイノベーションをもたらし、国際的に活躍できる課題発見・解決型のリーダーを育成することを目標とする。

 

4. 本コース・領域で育成する人材

・医科学・先端生命科学・疾患予防科学の概略を学び、今後の動向を鳥瞰できる。
・個の遺伝子情報や医療機器・各種デバイスから生み出される大量の情報を分析できる。
・イノベーティブな医療機器研究開発や医薬研究開発を組織内でリードできる。
・個の医療情報の取り扱いを熟知し社会的な配慮ができる。
・マネジメントの概略を知り、研究開発を牽引できる。

 

お茶の水女子大学大学院(博士後期課程)のアドミッション・ポリシー

ライフサイエンス専攻

 本専攻は、基礎生命科学からバイオテクノロジーにわたるライフサイエンス全般の発展に寄与するため、「生命科学」、「生活科学」という学問領域の有機的な統合を試み、人間を生命、生活の両面から捉える。そのため、生命科学領域、人間・環境科学領域、食品栄養科学領域、遺伝カウンセリング領域、疾患予防科学領域を設置する。本専攻ではライフサイエンス全般を基礎から応用まで幅ひろく理解でき、ライフサイエンス分野の研究者として自立できる、また指導的役割を担いうる人材を育成する。本専攻の学生には教員の指導の下、ライフサイエンスに関する課題を設定し、実験を主体とする研究計画を作成、実施し、その結果を公表することが求められる。そのため、研究に対する強い自覚と意欲を持った上で、文献調査能力、研究実施能力、研究の妥当性に対する判断力、発表能力等が求められる。

疾患予防科学領域

 本領域では、ライフサイエンス専攻のアドミッション・ポリシーに加えて、次に該当する者を求める。疾患予防に関する幅広い知識を体系的に学ぶ意欲がある。個々の遺伝情報や医療機器・各種デバイスから生み出される大量の情報を解析し活用する意欲がある。情報解析を通して社会へ貢献する意欲がある。国内外の他分野の人材と積極的に交流し新たな価値の創造に積極的である。

 

お茶の水女子大学大学院(博士後期課程)のカリキュラム・ポリシー

ライフサイエンス専攻の教育課程編成・実施方針

1. 理学、工学、生活科学の学問領域の有機的な統合をはかり、ライフサイエンス全般の広い視野に立って人間を生命、生活の両面から捉える能力をさらに発展させる

2. ライフサイエンスの基礎から応用までを幅広く理解し、ライフサイエンスの諸分野において研究者として自立でき、また指導的役割を担いうる人材を養成する。

3. ライフサイエンスに関する研究課題を設定し、研究計画を遂行し、研究成果を発表することを必要とする。そのため、独創性と先端性に優れた高度な研究実施能力、研究の妥当性に対する判断力、文献調査能力、発表能力等を育成する。

4. 連携機関との教育研究交流を図り、より先端的な研究、社会との密接なつながりを意識させるとともに、さらに幅広い視野を養う機会とする。

5. 主指導教員と副指導教員による複数指導体制のもとで、学位論文を作成する。

疾患予防科学領域

 疾患予防分野における幅広い教育を実践することで鳥瞰的な視点を授けるとともに、個々の遺伝情報と疾患予防関連情報の解析手法と利用方法、倫理的な対処方法、産業への活用方法を念頭に置いた教育を行う。医学、歯学、薬学、食品学、情報学、統計学の概略を把握する能力を育成する。個々の遺伝情報と医療機器・各種デバイスから生み出される大量の情報を解析する能力を育成する。個人情報の取り扱いに関する社会的な課題と対処する能力を育成する。マネジメント概論・コミュニケーション論を学び研究開発を牽引できる能力を育成する。

お茶の水女子大学大学院(博士後期課程)のディプローマ・ポリシー

ライフサイエンス専攻の学位授与の方針

1. ライフサイエンスの基礎から応用までを幅広く理解し、ライフサイエンスの諸分野において研究者として自立でき、また指導的役割を担いうる能力を身につけていることが課程修了に必要である。

2. 所定の年限在学し、博士論文の審査および最終試験に合格することを課程修了の要件とする。 以上の方針に基づき、各領域において以下の要件を満たした者に学位を授与することとする。なお、本専攻では、博士(生活科学、理学、学術)の学位が取得できる。

疾患予防科学領域

① 領域の教育理念・目標に沿った研究指導を受け、かつ所定の単位を修得し、標準修業年限内に博士論文の審査および最終試験に合格し、かつ以下の能力を修得している。

② 卓越した研究成果をあげており、疾患予防科学の発展に貢献できる研究能力を有している。

③ 高い倫理観を有し、遺伝情報に関する社会的な課題を理解し適切に情報管理ができる。

④ 個々の遺伝情報と医療機器・各種デバイスから生み出される大量の情報を解析・活用できる。

⑤ コミュニケーション力が高く研究開発をマネジメントでき国際的に活躍できる。

 

 

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